2016年9月20日火曜日

なまえを いれてください

――この世界に、初めから名前を持って生まれてきた人はいません。
 皆さんが持っているご自分の名前は、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、
 もしくは近所のおじさんだったり……?
 誰かが、あなたの幸せな未来を願って一生懸命考えてつけてくれたものです。
 あなたの名前には、どんな想いが込められているんでしょうか。
 
 そうだ!せっかくだから今日は『名前を付けてくれた人に感謝する日』にしましょう――


そんなトルネコの語りから始まった、ひとつの冒険。
 



仲間とともに大魔王を討ち滅ぼし、伝説となった僕がいた。


故郷を滅ぼされ、復讐を誓い旅立った僕がいた。


ふっかつのじゅもんがちがいますと言われた王子の僕がいた。


ⅢやⅣのあとでプレイしたせいで階段の降り方がわからなかった勇者の僕がいた。


金髪幼馴染と結婚した僕がいた。


無くしちまった俺を探して二つの世界を旅した僕がいた。


ロードの長さにイラつきながらなんだかんだで裏ボスまで倒した海賊の息子の僕がいた。


ゼシカを先頭にして揺らしていた僕がいた。


Ⅸは結局やってない僕がいた。


時を越え、果てしない世界で冒険を繰り広げている僕がいた。




幾度となく全滅し、それを乗り越え勝ち取った世界の平和。成し遂げた数知れない偉業。

伝説は、いつだってこの一言から始まっていた。








なまえを いれてください






というわけで行ってきました。(もう1ヶ月近く前だけど)
ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー。
奥さん誘ったら「興味ない」とバッサリ断られたので一人で!!

このライブ、どういうものかというと、ドラクエ30周年記念の催し物の一つで、
ドラクエの冒険をテーマにしたキャストと観客一体型のライブショーでございます。
会場全体を使って繰り広げられるダンスやアクション、
プロジェクションマッピングによる演出、ショーを盛り上げるおなじみの名曲たち…
史上初の、まさにスペクタクルなライブのツアーなわけです。(適当)




この夏限定で再演も映像化して販売もしないといつことなのでネタバレしつつ感想を綴ります。
場内は撮影禁止だったので実際のライブの画像はあらず。
公式サイト・PVから転載したものを載せております。

ストーリーはⅢがベース。魔王バラモス討伐に向かうも消息を絶った父の意志を継ぎ、
その息子である勇者がアリアハンから旅立つというアレです。
アリーナ、テリー、ヤンガス、パノンといったキャラクターが
シリーズの垣根を越えて登場してこのお祭りを盛り上げる!そんなの!


僕が行ったのは最後の開催地である横浜アリーナ。



ステージ構成は中央にある大舞台と十字型に並んだプロジェクタースクリーンがメイン。
中央から四方向に橋が伸びていて中サイズのステージと繋がっています。
さらにその周りに小さな島が浮いていて大舞台を取り囲んでいる感じでございます。
中央のステージは円形の台座がせりあがったり、橋も天井からワイヤーで繋がっていて
場面に応じて収納されたりまた降りてきて接続されたりとギミック盛りだくさん。

無駄に早く予約していたのでS席5列目というスペシャルな座席をゲットしていた僕は、
前の方なのかなーとか漠然と考えてて実際行ってみたら一番前の列でビビる。








これがもう本当にステージ目前で、キャストが舞台に上がる前に
こっそり移動してるのが見えたり、堂々と目の前通ってきて絡んできたり。
脇の小さい島も近いので、きわどい衣装でポールダンスするイシスダンサーズや、
艶かしいエアリアルシルクを披露する幽霊船ダンサーズのお姉様がたが
頭の上でセクシーなポーズを決めたりするわけです。
ドラクエの酒場とかカジノの地下で繰り広げられてた
「ヒューヒュー!」「○○ちゃん、サイコー!」みたいなのがリアルで再現されて興奮した。
ほんとに興奮した。誇張でなく鼻の下伸びた。

ただこの席にも最大の欠点があった。反対側が全く見えない。
すり鉢状になっているこの会場、ステージから離れれば離れるほど席は高い位置になり、
全体を俯瞰することで会場の端から端まで楽しむことができる。
僕の席は正反対で、目の前で殺陣を繰り広げ迫力あるアクションが堪能できたシーンもあれば、
ステージの反対側にキャストが集まっているために台詞が聞こえるだけで
何をやっているかわからないシーンもあった。

楽しめた反面、残念だったところもあるのも事実。
まあ、これもライブショーの醍醐味ってやつ?


・主演の方々の印象

勇者=松浦 司さん
倍率700倍の狭き門を勝ち抜いたひと。
海外でストリートパフォーマンスの修行したりUSJのダンサーだったみたいです。
あくまでドラクエの主人公なので、劇中では長い台詞は一切なく掛け声のみ。
そのため他のキャラと絡む時は頷いたり、アイコンタクトやサムズアップといった
さりげない演技が中心だった。こういうの見られたのはS席でよかったと思う。
"目力"がオーディション合格のポイントとなったらしいけど、何となくわかる気がする。

テリー=風間 俊介さん
ドラクエが好きなジャニーズの人らしい。声がテリーって感じだった。
切れ目もテリーって感じだった。
小学生並の感想ですいません。


アリーナ=しょこたんさん
15歳を演じた31歳のひと。身長は15歳並だった。さすがの声量というか、声は一番迫力あった。
腕振り回したり、本気で行くわよ!とかの台詞は
ヒーローズからそのまま飛び出してきたアリーナって感じだった。


ヤンガス=田尻 茂一さん
プロレスラーから役者に転身したひと。体型が近い分、
立木ボイスのヤンガスよりヤンガスらしい声のヤンガスだった。目つき悪すぎて好き。


パノン=田中 精さん
その経歴から一番舞台慣れしてそうなひと。狂言回しなので一番台詞が多く、
戦闘では縦横無尽に逃げまわるせいか運動量が多く、全体的に忙しそうで汗だくだった。
旅芸人という職業なのでお客さんにも絡みまくってた。


トルネコ=横浜は芋洗坂係長
ライブショーを盛り上げるトークがうまくて踊れるデブのひと。
本職コメディアンだけあって観客のハートを掴むのがうまく、ウェーブさせたり、踊らせたり、
ひとりひとりに絡んでは笑いをとり一体感を出していた。
絡んだ後は優しい口調で「神のご加護がありますように」と結ぶのが良かった。


・胸を熱くさせる、名場面の数々




ライブショーはダンスやアクションを中心としたバトルシーンと、
街で聞き込みしたりするトークシーンが交互に繰り広げられ進行していく。
ゲームの流れを再現しているのが面白い。
バトルシーンではモンスターも登場してステージ内外で大暴れ。
触手を振って踊るホイミスライムの可愛い動きや、華麗な宙返りを披露するシルバーデビル、
客席に降りてきて子供に急接近してはビビらすガーゴイルといった
モンスターたちのアクションもドラクエらしさ満点。
あとマドハンドが階段下りる時大変そうでヒヤヒヤした。


また、勇者一行が洞窟の中を進むシーンがあり、
その際洞窟内でうろちょろするパノンとヤンガス、それを叱るテリーのやりとりが面白かった。

ヤンガス「おっ、あそこに宝箱があるでげす!」スタター

テリー「おい!……列を乱すな。勇者が通った道だけをまっすぐ歩くんだ」

パノン「テリーさんは、結構ルールに厳しいんですねぇ。
     きっと”そういう世界”から来た人なんでしょうなぁ」

ヤンガス「あっしはそういうのよくわからないでげすよ…」

と、ゲームシステムを逆手に取ったメタセリフを放って会場は爆笑。
勇者ヨシヒコでも同じように一列になって民家に押し入り
困惑する住人をよそにツボを叩き割ってアイテムを探すネタがあったけど、
こういうのを生身の人間が演じるのは本当に面白い。


ラーの鏡を手に入れた一行が、『せっかくだから使ってみましょうよ』といって
客席に向かってくるシーンもあった。
キャストが持つラーの鏡にはカメラが搭載されていて、それを向けられると
上空のスクリーンに投影されるという仕組みで、照れながらもピースを作るお子様を映したり、
「おい、な ぜ 目 を 逸 ら す 。怪しいな」と、
テリーに難癖つけられたお姉さんが映されたりしていた。
3人目の子供を映した時にスクリーンの映像が変化してモンスターの姿に変わってしまい、
「こんなに純粋そうな小さな子供がモンスターだったとは。
 しかし大きくなったらモンがとれて"スター"になるんでしょうなぁ」
と、パノンが上手いことを言って拍手をもらっていた。



そして、やっぱり熱いシーンもある。

ライブショー本編ですらない冒頭のトルネコの語りから思うところがあってグッときてたんですが、
その後の歴代主人公たちが次々と現れては客席に向かってポーズを決め、
最後に舞台中央にスポットライトが当たりⅢの主人公が登場、序曲が流れ出す
っていうオープニングの時点で興奮しすぎて軽く泣いてました。すっげーかっこよかった!
冒険の数々を思い出さずにはいられないし、これから始まるライブショーへ期待が
一気に高まった。やはり序曲はすごい曲だ。


オーブを捧げて不死鳥ラーミアを甦らせるⅢの名場面も再現されたんだけど、

「わたしたち」「わたしたち」
「この日をどんなに」「この日をどんなに」
「「まちのぞんでいたことでしょう。」」

の双子の名台詞も当然あるわけです。

これがまた神秘的かつ透明感のある声のお二人で、BGMも相まって最高に震えた。

 「「時は来たれり。今こそ目覚めるとき。大空はお前のもの。舞い上がれ、空高く!」」

セリフよすぎる。感極まって2泣き目です。


その後会場上空を飛んできたラーミアが勇者だけ掴んで反対側に消えていくんだけど、
残されたパーティの面々がぽつんと立ってるのが、
「舞い上がれ、空高く!」した後のラーミアが舞い上がった結果
勇者たちを置いて外いっちゃうFC版のアレを思い出してちょっと笑った。



そして、父オルテガとの再会のシーン。
オルテガはもちろん裸マントのカンダタスタイルではなく、
ちゃんと勇者っぽい恰好をしたワイルドでかっこいいおじさんだった。

キングヒドラとの一騎打ちを繰り広げていたオルテガの姿を見つける勇者たち。
初めは「この世界でも絶望せずに戦っている人もいるのか」といった反応だったが、
勇者のみが使える「ライデイン」の雷が飛び交うのを見て、、あの人物が勇者の血筋の者、
つまり行方不明になっていた勇者の父親だということに気づく一行。
苦戦しているのが見てとれるが、あまりに熾烈な戦いのため近づくことができない。
仲間たちはそれでも飛び出して行こうとする勇者を必死に食い止めている。

このままではやられてしまう!

しかしライブショーのオルテガは強く、そして賢かった。
ゲームのようなラリホーの無駄うちをせず的確に攻撃を決めていき、
バギクロスまで撃っちゃう余裕っぷり。
おまけにライデインでとどめを刺す盛り上げ上手。
(最近知ったんだけどキングヒドラはバギ、デイン以外の攻撃呪文に対して耐性もっていて、
 ラリホーも実際効くらしい。オルテガの戦術が攻略のヒントになっていたようだ。
 父さんありがとう……)

キングヒドラは朽ち果てたが、オルテガも満身創痍である。
やはりバギクロスのぶんのMPはベホマに回すべきだったか……。
精も根も尽き果てたといった様子のオルテガは剣も握っていられず、がっくりと膝をついてしまう。

そこに駆け寄る主人公。倒れる寸前でなんとか抱き留める。




「だ、だれかそこにいるのか……もはや、何も見えぬ…何も聞こえぬ…」

勇者は必死に声をかけるがその言葉は届かない。

オルテガは自分を支えているのが息子だと気づかないまま、肩を掴み語りかける。

「どうか伝えてほしい、私は、アリアハンの、オルテガ……。
 も、もし…そなたが…アリアハンに行くことが、あったなら……。
 その国に住む……我が妻と息子を尋ね……オルテガがこう言っていたと伝えてくれ……。

 平和な世に……できなかった、この父を、許してくれ、と……」


勇者の肩を掴んでいた手がはらりと落ち、息絶えるオルテガ。叫ぶ勇者。

沈黙が会場を包む。(僕は泣いてました)

傍らに立っていたテリーが、オルテガの使っていた剣を拾い上げ、天に掲げる。
刀身がスポットライトを浴びて一際輝きを放つ……。

手首を返し、剣の持ち手を勇者の頭上に差し出す。


「戦え、父の剣で!」



決意を宿した目で立ち上がり、剣を受け取る勇者!うおおおおお!


という感じで大魔王に挑むわけなんですが、涙がとまらんかった。
ゲームのまんまの台詞回しの熱演にも感動したし、
僕もいい歳になってるということも相まってこういう展開は本当に弱い。





んで迎えた最終決戦。大魔王ゾーマとの死闘。
光の玉を使って闇の衣を剥がす→『勇者の挑戦』が流れるというSFC版の演出再現も憎い。
しかし仲間たちが持てる力を駆使して攻撃し続けるも、ゾーマが繰り出す反撃に耐えきれず
ひとり、またひとりと倒れていく仲間たち。

一対一となった勇者とゾーマだが、瀕死の勇者に対し余裕を見せつけるゾーマ。

「愚かな……周りを見てみるがよい。仲間も倒れ、今や貴様ただひとり。
 貴様にはもはや何も残されていない。さぁ、絶望しろ。その絶望が我が闇の力となるのだ……」


ふらふらになりつつ剣を構えた勇者だったが、辺りを見回してみると、
傷つき動けなくなった仲間たちが倒れている。
ゾーマの言葉通りもうボロボロの自分しか残されていない。
そして、圧倒的な力の差を前に勇者の心は折れていた。
膝をつき、がっくりとうなだれる勇者。ゾーマは満足そうに笑い、
とどめを刺さんと近づいていく……。

会場が闇に包まれていく。



――お前は一人じゃない。


竜の女王の声が響く。


ずっと一人じゃない。
自分の名前を思い出せ。
お前には名前をつけてくれた人がいる。
どんな時でも、お前の名前をつけた人がお前のそばにいる。

お前のその名前は、 希望だ。
誰かがお前のために、希望を持ってつけた名前だ。

辛く、苦しい時は自分の名前を思い出せ!お前につけられた名前の意味を思い出せ!
自分が誰なのか思い出せ!
お前の名は――



ホール上空のスクリーンに8bitの画面が浮かびあがる。
それは僕らが、これから起こる冒険への期待に胸を膨らませ、
自分の分身たる"主人公"へ希望を込めるあの画面。



たかし、ゆうすけ、こうへい、なおあきといった名前が
ひとつひとつ浮かんでは光となり、空へ飛んでゆく。
何千、何万といった名前が眩い光の束となり勇者に降り注ぐ!

突如、光の中に浮かび上がる人影。
輝かしい光を受けながらⅠ~ Ⅹの歴代主人公たちが勇者とゾーマを取り囲むように現れた。
そう、彼らもまた誰かの希望と共に名前をつけられた者たち。
時代を越え、世界を越え、いま勇者に力を貸さんと 空に手をかざす。

突然の事態に大魔王ゾーマもおどろき、とまどっている!

ゆらりと立ち上がる勇者。
己が敵を見つめ、強く握りしめた剣を天に突き上げ、咆哮する。


俺の名前は――






ドオオオーン!はい号泣!
いやー泣いたね。
ここにきてこのライブショーのテーマの【名前】がこういう風に生きてくるとは。
ドラクエの主人公は自分自身。みんなの中には自分だけの勇者がいる。
そんなドラクエの『お約束』を大胆かつ巧みに演出に落とし込んでいた。
勇者を演じてるのは松浦氏だけど、舞台の上で戦っている勇者は
あの日アリアハンを旅立った勇者と同じ『さとし』だったんだ。




んでここにきてようやくこの特設サイトの意味がわかった。
名前と来場日を入力すると、その日のスクリーンに映し出されるという仕掛けだった。
多すぎて僕の名前は見つけられなかったけど、光の一つとして飛んで行ったことだろう。





といった感じの笑いあり、涙ありの盛り沢山のショーでした。超面白かった。
最後の演出も良かったけど、アレンジされたBGMが全体的に良かったなぁ。
序曲も良かったけどラーミア復活とゾーマ戦での『勇者の挑戦』は震えた。震えてばっかりだ。

30年積み上げてきたドラクエシリーズの持つポテンシャルはまさに天井知らず。
堀井さんもすぎやま先生も鳥山先生も、まだまだ作品作りまくってほしいっすねぇ。

物理的に見えなかったシーンもあったし、うまいこと編集された円盤出てほしい。
上記創始者たちの権利関係で難しいんかな。残念。




・まとめ

ポールダンスがエロかった。

以上レポっす。

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