今度はロバート卿によって叩き起こされた。
何でも僕が逃げてきた方面からたくさんの松明の明かりが見えるとのこと。
もしやジギスムントの軍勢が…!?
その確認のために僕が呼び起こされたということらしい。
結局大して眠れなかったけど行かないわけにもいくまい。
松明の明かりを頼りに慣れない城内を彷徨う。
いつのまにか外は嵐になっていた。
そんなわけで城壁へとやってきた。
既にディヴィシュ卿も現地入りされている。
僕は十中八九侵略者たちの襲来と思っていたのだが、プロに言わせるとその可能性は低いようだ。
タルンベルクの斥候が色々と情報を持ち帰ったようで、スカーリッツを取り囲むジギスムント軍も確認されたようだ。
現時点ではスカーリッツ城は攻め落とされてはいないらしい。
どうやら嵐が強まったことで攻めあぐね、一旦引いたところに陣を敷き直したのだとか。
とかなんとか言ってたら問題の集団が目と鼻の先まで近づいていた。
確かに兵隊では無さそうだが…。
ロバート卿が声をあげ一団を静止させる。
最前線で集団を率いていたのは…ラジック卿!
軽口を叩き合う領主たち。
ひとまずは安心といったところ。
お主の伝令が教えてくれたぞ、と語るディヴィシュ卿。
放った覚えのない伝令という単語にピンと来なかったラジック卿だが、それが僕のことだとわかると驚いた表情を見せた。
さすがのラジック卿もあの状況ではダメかと思っていたようだ。
自分自身ここまで辿り着けたのは驚いている。
スカーリッツ城に逃げ込んだ皆は一時籠城の構えを取っていたが、嵐が強まり攻撃の手が収まったので夜の闇に乗じてこっそり抜け出すことにしたという。
作戦は見事に成功し、気づかれることなくこのタルンベルグまでやってこれたというわけだ。
タルンベルグに受け入れようとしたディヴィシュ卿だが、ラジック卿はこれを辞退した。
朝になって城がもぬけの殻になっていることに連中が気づけば逃亡先として疑われるのはタルンベルグだろうし、実際に匿っていない限りは攻め込んでくることもないだろうとのこと。
そんなわけでもう少し南下し、ラッテイで受け入れてもらうようだ。
ラッテイはデカい城と城下町が栄える強固な領地。ジギスムントも簡単には手が出せないだろう。
なお、このスカーリッツ襲撃→嵐の夜に脱出→ラッテイへ避難という流れは史実に基づいているらしい。
ラジック卿もディヴィシュ卿も歴史に実在した人物なので、もしかしたらこういうやり取りが実際にあったのかもしれないネ。
さて、話題は僕のことに。
"伝令役"をやり遂げたことを称えてくれるのと同時に、ラッテイへの旅に加わるかを訊ねてきた。
領主様が一平民に気に遣ってくれるのはとてもありがたいが…。
僕はまだやることがあるのだ。
そう、もう一度スカーリッツへと戻る必要がある。
理由は単純。殺された両親をちゃんと埋葬してあげたい。ただそれだけである。
(ゲーム内の説明によると)キリスト教的には遺体を清めたあと布で包み、ちゃんとお清めされた土地に神父様のお言葉を携えて土葬するのがきちんとした埋葬。
そこまでちゃんとしてあげられないかもしれないけれど、少しでも静かなところで眠らせてあげたほうが道端で犬に食われて腐っていくよりマシなはずだ。
理解はできる、と前置きされた上でめちゃくちゃに反対される。
まだクマン人たちが残っているだろうし、ああいった略奪が起こった土地は野盗や賊が必ず蔓延る。とにかくしばらくは迂闊に近づけない危険な状態だという。
しばらくここから出ないよう釘を刺された。
確かに脚は痛むが、ここで何日も休んでいたら先に両親の身体が朽ちてしまう…。
そんなわけでラジック卿の一団は再び進み出した。
嵐の夜の騒動はこれにて一段落といったところか。
ラジック卿が去っていった後も警戒態勢は続く。
僕も目が冴えてしまったし、助けてもらった恩も返したいので協力を申し出る。
ジギスムント軍はラジック卿たちがいない事に気づけばすぐにでもこちらにやってくるだろう。
見張り係と駄弁りながら過ごす。
僕とラジック卿のやり取りを聞いていたみんなが優しい声をかけてくれる。
無茶をしないように、ここから飛び出していかないようにと配慮してくれているのだろう。
『Tを押して待機』を伝授してくれるおじさんが登場。
教えに倣い5時間ほどぼへーっと過ごすことにした。
ハッと目が覚める。どうやらうたた寝してしまったようだ。
空が明るくなり始めている。夜が明けたのだ。
そしてどうにも騒がしい。
慌ただしく走る兵士たちに混じってついていく。
向かう先は城門のようだ。
城門前。
胸壁へと上がると兵士と領民たちが集まっていた。
彼らの視線の先には……。
あの時と同じ軍旗が翻っていた。
続く。
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