2020年11月18日水曜日

「ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟」レビュー 竜頭蛇尾だが刺さる人には刺さる

こんにちは、タマです。

ヴァンパイア:ザ・マスカレード 紐育に巣食う血盟、発売されましたね!
なんかよく知らんけど雰囲気ええやんと楽しみにしておりまして、発売日にswitch版を買いました。

重大なネタバレはありませんが、物語序盤のスクリーンショットや物語ラスト(の印象)について言及した部分がありますのでご注意ください。



手堅い邦訳、美麗なグラフィック、でも肝心の文章が読みづらい

このゲームはいわゆるビジュアルノベルです。
多少の誤字や翻訳の行き届かない部分はあるものの、全体的には非常に高いレベルでローカライズされており、古い洋画で見たような雰囲気たっぷりの言い回しが楽しめます。

特殊な世界観ゆえに専門用語が頻出しますが、そういった用語は赤くハイライトされ、ゲーム中にいつでもディクショナリー機能から確認することができます。

人物は一枚絵で表示され、クオリティの高いリアル寄りの絵なので嫌なバタ臭さがなく、プレーヤーにすんなりと人物のイメージを与えてくれます。

が、ビジュアルノベルの要である文章が、「視覚的に」すごく読みづらいです。

画面の1/6程度の狭いウインドウに文章がもりもり表示され、強制スクロールされる仕様。
表示の速さは選べるものの、遅い/普通/速いの三種類で、瞬時に全文表示はありません。
(文字がちらちら動くの気が散るから全文表示派なんですよね)
決定ボタンを押せばすぐに全文表示されますが、前述のように文末に強制スクロールされ文頭が見えず、さらには勢い余って選択肢を確認する前に選んでしまうこともしばしば。

もはやスキップボタンを押してログを確認したほうが読みやすいくらいなのですが、ここでまた嫌がらせのように差し込まれる「斜体」の文章。

どうやらセリフは通常書体、地の文は斜体といったふうに区別されているようなのですが、密度の高い漢字を含む日本語はそもそも斜体に向かない文字です。アルファベットの斜体と違い、非常に判読性が低い。
そこはローカライズで色変えるとか段落下げるとかにしといてほしかったですね……。
なんなら地の文なんだなって読めば分かるから、通常の書体にしといてくれてもよかった。


引き込まれる世界観と物語、三人の主人公、だが一本道の「ビジュアルノベル」

本作はニューヨークを舞台に吸血鬼たちの闘争が描かれ、作りこまれた緻密な世界観、魅力的な登場人物たちが物語を盛り上げます。

人間を魅了する吸血鬼の女、吸血鬼に血を提供する少女といった「あるある」なキャラクターもいれば、皺ひとつないスーツで冷酷無比に任務を遂行する男、人間社会に溶け込む半端者、アングラに生きハードボイルド探偵小説を体現したような男…等々、現代を舞台にしているからこそのキャラクターもおり、なかなか新鮮です。








(吸血鬼が名指しでイケアをdisるシーン好き)

キャラクター同士のかけあいも楽しく、海外ドラマを見ているような気持ちでわくわくします……が、正直ゲーム要素(プレーヤーが介入して物語を動かす要素)はそんなにないです。
会いに行く人物を選べてその人の個別エピソード(数話で完結)を読める方式なので、そういう意味では選択制なのですが……。

「三人の主人公(三つの氏族)が選べる」とされていますが、実際のところオープニングイベントとサブイベントのひとつが少々違うだけで、メインストーリーにさしたる違いはありません。
氏族が違うと出会う人たちが違うのかと思っていましたがそんなこともなく、氏族の違いは能力の違いとして選択肢にあらわれるのみで、登場人物の反応が少し変わる程度です。

大きなルート分岐は無くほぼ一本道、それでも各エピソードは魅力的。
最後までこれなら良かったのですが、残念ながら……。
クリフハンガーの悪い例といいますか、大変に消化不良な印象を残して物語が終わります。
それまでが良かっただけに非常に惜しまれます。

これさえなければ本当にね、おすすめだったんですけどね……!
正直「steamセールで1000円くらいなら買い」としか言えない。
私個人はすっごく面白くて「Vampire: The Masqueradeを知れたから3000円の価値はあった」って思いますが、万人には勧められねえ。

カディールかっこいいしダンジェロのエピソードとか最高なんですけどね…!!
どの周回でもダンジェロに会いに行っちゃう。


そもそも「Vampire: The Masquerade」って何なの

みなさんは「Vampire: The Masquerade」って知ってました?

私は不勉強で存じ上げなかったのですが、アメリカでは有名な「World of Darkness」という大人気TRPGシリーズの最初のタイトルだそうです。

「Vampire: The Masquerade」シリーズだけでも何本かゲーム化されており、一見すると似たようなタイトルのゲームがたくさんあります。もとがTRPGタイトルなのも知らなかったので、「紐育に巣食う血盟」発売前に情報集めるのけっこう大変でした。今日本語版公式webサイト見たらわかりやすく書いてあったけども。

実はこの「紐育に巣食う血盟」のスタンドアローン拡張(つまり続編かスピンオフ?)でVampire: The Masquerade - Shadows of New York っていうのも出てまして、上でうだうだ言ったけどこれも日本語版出たら買っちゃうと思う。
来年に発売予定の Vampire: The Masquerade - Bloodlines 2 も面白そうなんですけど、おそらく私は酔っちゃうからできないタイプのゲームなんですよね……。

他にビジュアルなしノベルゲーム(英語版のみ)も出てるのでめちゃくちゃ読みたいです。
「紐育に巣食う血盟」がたくさん売れればローカライズされるかもしれないからこうやってレビュー記事書きました。みんな(ちょっと安くなってからでいいから)買ってくれ……!
お気づきかもしれませんがちょっと沼に足を取られてるんですよね、ゲームとしてはおすすめじゃないけど読み物としては(ラスト以外)おすすめだし他のも読みたい、「Vampire: The Masquerade」の日本語版ルルブ絶版だしamazonで2万円超えてるじゃん、もう情報源が英語しかない、英語勉強するしかないじゃん……


ちなみにこのシリーズ、「Vampire: The ~」の他に「Werewolf:The ~」等ありまして、言われてみればsteamでこのゲーム見たことある!っていうタイトルでしたね。

Werewolf: The Apocalypse — Heart of the Forest とか、発売前のゲームですがWerewolf: The Apocalypse – Earthblood とか。
(参考記事:4gamersさん)「Werewolf: The Apocalypse - Earthblood」の2021年2月4日リリースがアナウンス。PS5及びXbox Series Xにも対応へ

世界観好きなので気になるなー。



推しキャラ紹介

今回の沼です。


カディール・アル=アスマイ

数千万円クラスの腕時計と高そうなスーツに身を包んで淡々と荒事を処理する、いろんなギャップ萌えを仕掛けてくる吸血鬼。多分あざとさのステータス10くらいある。なんでカディールルートないんですか!?

あとヒゲでロン毛の吸血鬼って時点で昔好きだった男性と属性が丸かぶりなんですよね、沼るに決まってるじゃん


ダンジェロ









「は? 何この小汚いおっさん」→「パケ絵をダンジェロに変えろ」ってくらい好きになったしみんな絶対好きになると思う。こういうのほんとさあ……
続編にも出るっぽい。日本語版くれよ。

 

深い爪痕を残していったゲームでした。売れてくれ。

1 件のコメント:

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